OpenClawに経営戦略を壁打ちさせたら、1日で4万円溶かした件

梅田 祥太朗 梅田 祥太朗 · 13 min read
目次

はじめまして、リチェルカの見習いエンジニア、梅田祥太朗です。 (弊社のスーパーFDE、梅田脩平さんと違って、ジュニアエンジニアとして日々テスト追加などの小さな実装から学習中です)

AIエージェントを業務に使っている話

リチェルカでは、社内の特定メンバーにMac miniを貸与し、AIエージェント「OpenClaw」を常時稼働させています。

私も日常的に使っていて、メール返信、日程調整、予実管理、人事評価など、オペレーションのほとんどをOpenClaw上のAIエージェント「うめくろー」に任せています。 Slackで話しかければ大体のことはやってくれます。メール返信、スプレッドシートの売上集計、予実管理、経費精算。朝起きたら昨日の予算vs売上レポートが投稿されている、という状態です。

正直、もうこれなしでは仕事が回りません。

今回はその便利さの裏にある、コストの話を書きます。


風邪の日に事業計画を作った話

ある日、風邪を引きました。

オフィスには行けないけど、そういう時に限って仕事したくなるもんですよね。笑 布団の中でSlackを開いて、うめくろーにこう言いました。

「事業計画をリバイズしよう。2030年までの売上モデル、人員計画、費用構造、全部ゼロから組み直していこう。」

そこから丸一日、布団の中で事業計画の壁打ちです。

「この前提変えたら数字どうなる」「人件費の計算ロジック修正して」「採用費のエージェント経由比率はxx%で」「AI原価は売上のyy%」。 こうした指示を何十往復もやり取りしました。スプレッドシートの数値を読み書きさせながら、計画を詰めていきました。

結果、相当に良い事業計画ができました。投資家向け資料としても使える精度です。 普通にやれば一週間程度かかる作業が1日で終わっただけでなく、一人で作るよりクオリティも高い。これがAIを使う良いポイントですよね。

それは良かったのですが、数日後にAnthropicの管理画面を見て驚きました。

1日で$247。日本円で約37,000円。

Claude MAXプラン(20x)が月額$200(約¥30,000)です。それを1日で超えている。 このペースで毎日使ったら月$7,400(約110万円)。さすがにこれは考えないといけないなと。

もちろん、AIエージェントが生み出している価値を考えれば妥当とも言えます。 ただ、せっかく使うなら気持ちよく使いたい。コストの構造を理解すればもっと抑えられるはずだと思い、分析してみました。


実際のデータ

Anthropic Consoleからエクスポートした利用データ(2026年3月5日〜4月3日)です。

日別コスト(うめくろー分のみ)

期間日平均状況
3/5〜3/12(対策前)$89/日事業計画で毎日長く利用
3/13(分析・対策実施)$48
3/14〜3/22(対策後)$11/日一気に下がった
3/23〜3/31(通常運用)$33/日たまにスパイクあり
4/1〜4/3$19/日安定

ピーク日は3月10日の$247(約¥37,000)。Claude MAXプラン(月額$200)の1.2倍を1日で使っています。 あの風邪の日です。

コストの76%は「Cache Write」だった

項目割合
Cache Write76.1%
Cache Read17.6%
Output(AIの回答)6.2%
Input(こちらの入力)0.1%

AIの回答生成にかかるコストは全体の6%しかありません。請求の大部分は「AIに文脈を覚えさせる」ためのコストでした。


Cache Writeが高い理由

Prompt Cachingの仕組み

Claude APIには「Prompt Caching」という機能があります。会話履歴をキャッシュして、次のAPI呼び出しで再利用するものです。

  • Cache Write(初回書き込み): 通常のinputトークンの1.25倍
  • Cache Read(2回目以降): 通常の0.1倍

キャッシュに載れば2回目以降は安い。ただし、会話が進むたびに新しい部分がCache Writeされます。

AIエージェントと100往復やり取りすると、100回目の呼び出し時には過去99往復分が全部コンテキストに入っている。 そこに新しいやり取りが追加されてCache Writeされる。会話が長いほど1ターンあたりのコストが上がっていく構造です。

モデルの単価差

モデルCache Write (per 1M tokens)
Claude Opus 4.6$18.75
Claude Sonnet 4.6$3.75

5倍の差があります。うめくろーの97.8%はOpus 4.6を使っていました。 最も賢いモデルで長時間セッションを回す、という意味ではコスト的にはよろしくありません。


スパイクした日の中身

日付コストやっていたこと
3/9-3/10$185 + $247風邪の日。事業計画v5を丸一日壁打ち
3/11$145事業計画の仕上げとプレスリリースの作成
3/31$93月末の経費精算28件をまとめて処理
3/24$58システム設定の大幅変更

全部「長時間×往復回数が多い」タスクです。事業計画の壁打ちでは、1セッションで200,000トークンを超えていました。


やった対策

1. サブエージェントをSonnetに変更

AIエージェントがサブタスクを実行する際、別セッション(サブエージェント)を立ち上げます。 これまでメインと同じOpusを使っていたのを、定型的なタスクはSonnetに切り替えました。

→ サブエージェントのコスト約80%減。

2. システムプロンプトの圧縮

毎回のAPI呼び出しで送られる記憶ファイル(MEMORY.md)やルールファイル(TOOLS.md)が、使っているうちに23KBまで膨れていました。 事業計画の詳細やPR文書は別ファイルに退避して、参照だけ残す形に。23KB → 5KB(77%削減)。

→ 毎回のCache Write量が約50%減。

3. 定型タスクのスクリプト化

毎朝の売上レポート生成が、AIに毎回スプレッドシートを読ませて計算させて投稿させる方式で832秒かかっていました。 一度AIにPythonスクリプトを書かせて、以降はそれを自動実行する形に変更。

AIが毎回計算: 832秒 → スクリプト実行: 2.8秒

APIコストはほぼゼロになります。個人的にはこれが一番重要な考え方だと思っています。 AIの本当の強みは「毎回考えてくれること」ではなく「一度だけ考えさせれば、その結果を何度でも再利用できること」です。 繰り返す業務をそのままAIに投げ続けるのは、毎朝シェフを呼んで同じ料理を作らせるようなもの。レシピを書いてもらえば、あとは誰でも作れます。

4. 会話の分割

事業計画の議論、メール返信、経費精算を全部1つのセッションでやっていました。タスクごとにセッションを分けることで、Cache Writeの積み上がりを抑えます。


結果

指標対策前(3/5-3/12)対策後(4/1-4/3)変化
日平均コスト$89/日$19/日-79%
月間ペース¥400,000¥86,000-78%

コストの考え方

AIの業務利用は、大きく2種類あると考えています。

1つ目は、AIに「考えさせる」使い方。 経営戦略の壁打ち、文書レビュー、複雑な判断など。対話のたびにトークンが消費されるので、長く使えばコストが上がります。

2つ目は、AIに「プログラムを書かせて、プログラムを動かす」使い方。 売上レポート、経費集計、定型チェックなど。一度コードを書かせれば、以降の実行コストはほぼゼロです。

繰り返す業務を1つ目のやり方でやり続けると、コスト負けします。 「毎回考えさせる」のではなく「一度だけ考えさせて、以降は自動で回す」。この切り分けが大事です。


気をつけていること

  1. コストを可視化する。 日別・キー別・モデル別で把握する。見えていないと判断できない
  2. Cache Writeを理解する。 請求の76%はAIの回答ではなく、文脈を維持するコスト
  3. モデルを使い分ける。 深い思考が必要な場面はOpus、それ以外はSonnet
  4. 長いセッションを避ける。 タスクごとに会話を分ける
  5. 繰り返す作業はスクリプト化する。 例として832秒が2.8秒になる

AIエージェントは、使い方を理解すれば月数万円で十分に運用できます。 ただ、何も考えずに使うと月数十万円になる。

Claude MAXが月¥30,000で使い放題の時代に、API経由だと1日で¥37,000。 この差を理解した上で、それでもOpenClawを使う理由がある——その話はまた別の機会に書きます。

見ていただき有難うございました。


この記事は、うめくろー(OpenClaw上の私のAIエージェント)が下書きを作成し、梅田が編集・監修しました。 コスト分析もうめくろー担当。この記事自体がAPIコストを生んでます。再帰的ですね。


採用情報

リチェルカではAIをフル活用して超高度人材へ究極進化したい方を募集しています。 エンジニア・ビジネスサイド関係なくAIを使いまくれます。というか使わないと居場所がないです。

この記事を読んで面白いと思ってくださった方は、ぜひ採用ページから適当な職種を選んで「梅田と話したい」と連絡してください。 カジュアルにお話ししましょう。